12 顧問を辞めるそうです
次の日、っていうか土日挟んだと思うので翌営業日だね、学校から帰ってきた息子は、部活で大変面倒なことになったと言う。
部活が始まるときに、校庭を走るんだそうだが、これが1周何秒だかで走らないといけない。それを10周ほど走る。1周を時間内に走れなかったら、ペナルティで2周余計に走らねばならない。このタイムがなかなか厳しい設定らしく、どうしても時間内で走れない子もいる。ペナルティが溜まると延々校庭を走ることになって、室内での練習に参加できない。
それが、その日はペナルティA周の子とペナルティA+1周の子の室内練習に参加した時刻が、A+1周の子のほうが早かった。それで顧問が怒って「こんなことではもう自分は顧問を辞める」と言って体育館を去ってしまった。
こういう時に子どもというものは、「みんなで謝りに行かなくてはいけない」ということになっている。これは小学校くらいから刷り込まれている。わたくしもそうだったが、息子もそうだ。みなさんも心当たりがあると思うんだけど、ひょっとしてこの地方だけのものか。アメリカではそんなことやらん、という気もする。大人になってよく考えるとかなり理不尽なことではある。
しかし、ここの公立中学ではそういうことになっている。実際、「もういいよ、ほっとこうよ」と言った生徒がいたんだそうだが、「そりゃいかん。面倒でもここは謝らねば」と、翌日も来ない教師にどう謝るかみんなで相談して、みんなで謝ってそれじゃあまた顧問を続けてやるさ、と元の鞘に収まりましたとさ。
この件に関してわたくしは、
保護者に文句をつけられてぶんむくれた教師が、自分の暴力的行為を反省するでもなくもちろん謝るのでもなく、八つ当たりして生徒に謝らせて溜飲を下げている
ようにしか感じられなかった。本当はたまたまそのタイミングだったのかもしれないが、わたしが校長に苦言を呈して恐らく校長から話がいったその日だもん。少なくとも机投げた件について自省する部分があったのなら、たったひとりの生徒がちょこっと走るのの手を抜いただけで、練習2回分(その日と次の日)やらせずに全員に謝らせるような行動には出ないでしょ。
いずれにせよ、校長から「先日の机を投げた件」に関して、
「机は投げたのではなく、かっとなって蹴っただけです。生徒のためを思って熱心な指導をして、行き過ぎの面があった点については注意しました。そういうことのないようにします」
という内容の電話の報告があったとき、わたしは、
直後に当てつけのように「顧問やめる」と指導を放棄するのは、反省しているとは思えない。悪いことをしたのであれば、まず謝罪があってしかるべきなのに、逆に生徒に謝らせているのは何事か。机を蹴っただけ、というのだって校長先生が見ていた訳ではないので何が真実なのかわからない。一体どういうことが起きたのか、わたしだけでなく保護者全体に説明してほしい。謝るべきような事があったのなら、まず謝ってから指導を続けてほしい。
と述べた。
保護者全体に説明する機会はなかなかとれないだろうから、文書で結構です、とも言った。
校長は思いっきり歯切れが悪くなった。恐らく彼にとって、あるいは世間一般なのかここいらの地域なのか不明だがその常識にとって、性質の悪いクレーマーの発言だったのだろう、わたしの言ったことがらは。
とは、のちに気づいたことであって、わたくしはただまじめに、そのような指導は子どもにとるべきではないので改めてほしいと願い、しかし教師もなぜそのような指導をしたのか信条やら理由があるのであろうからそれも加えて保護者の意見も加えて、見えるところで確認、必要とあらば是正をすべきだと訴えたにすぎない。
そんなこといちいち説明しなくても理解されていると思ったし、そのような指導に正当性があるのなら、その段階でわたくしに言って聞かせてくれるものだと思う。校長の言う正当性らしき部分は、単に「熱心で」だけだ。
もしくは、この時点で既に校長はいろんなことを隠そうと動き出したのかもしれない。
11 放物線を描く机
ある日、学校から帰ってきた息子がわたくしにこう言いました。
「今日さあ、初めて机がきれーっな放物線を描いて飛ぶのを見ちゃった」
なんのこと。
ちっとも状況がわからん。だいたい中学生にもなって、まともに会話ができんのだよ、うちの息子は。丁寧に事情聴取をせねば、何の話をしているのだか不明。
で、丁寧に事情聴取をした。
結果、
部活で、やれと言われたことをやらないでいただか、無駄口をたたいていただか、そんなに大したことじゃない何かしらよくない態度でいた生徒2名に対して、顧問がぶち切れて体育館によくある3人掛けの長テーブルを投げた、生徒には当たらなかった。
ということらしい。あくまでも息子の感性で。
わたくし、かちんときましたのよ。
こりゃいかん、黙ってはいられん。
と思ったのよ。
生徒に対して怒って机投げるって、机投げるって、だめでしょ。
教師としてという以前に、机投げるって、人間としてアウトでしょ。
あなたの周りに、怒って机投げる人っていますか。職場でそんな事象がありますか、あったならちょっとした事件でしょ。事件にならないのは、怒った星野仙一くらいだ。広島のブラウン監督だってベースを投げて退場になった。
あなたの部活の顧問は怒ると机を投げるのか、とわたしは息子に問うたらば、バレー部の顧問はよく椅子を投げる、一度生徒にちょっと当たったのを見たことがある、との答え。この会話の噛み合わなさには常日頃イラッとするけどそれは置いといて、いかんだろ、この学校。とわたしは思う訳だった。
という訳だったので、わたくし学校長に抗議しましたのよ。すなわち、
部活の顧問が怒って机投げたって息子が言ってますけどどういうこと?
とゆうのを、アポとって対面して述べた。校長先生は誠実に、それはあってはならぬこと、どういうことかしっかり確認します、とお答えくださった。
10 天気予報の名誉回復
先日、天気予報について書いて、
恰も天気予報がけしからんというニュアンスがあったんでないかと危惧し、
天気予報の(わたしの勝手な)名誉回復のために書き足す。
昔と較べたら本当に天気予報の精度は上がったと実感する。
かつて天気予報は、あてにならないものの代名詞であったし、
予期せぬ天気がやってくるから世の中はおもしろかったりした。
今はそうでもないよ。
それはもちろん、天気予報に携わる人々が一生懸命精度の向上を目指しているからに違いない。多大な人々の専門の最高の頭脳が集結して、多大な時間と経験と努力によって、天気予報は着実に精度を上げているのだ。
でもね、だいぶ前に新聞の投書欄でこんな意見を見た。
わたくしの記憶によれば40か50の結構いい歳した、教員だったか教育関係者だったかの公務員の意見だった。違ってたらごめん。
最近はいろいろなところから天気予報が出されていて、異なる予報が出ている。行事の中止や敢行を決めるのに、どれを見ていいのかわからない。違う予報を見ている人から不信感を持った問い合わせもくる。行事なんかをとりまとめて進めていくのがどんなに大変か。困る。昔のようにひとつにならんか。
おふざけになっているのか。
天気予報がひとつだろうが100だろうが、真実の天気はひと通り。予報で動く訳でもない。
たくさんの天気予報があるということは、それだけ予報が難しいということ。精度がぐっと上がれば自然にひとつの予報になるでしょ。さまざまな見解があって複数の予報が生じている過程において、それを一元化するのは、100の宝物の99を捨てろと言っているのと同じ。
予報をひとつにしたかったら、自分で選んで決めればいいことだ。
いくつもあってまったく困っちまうよ、と愚痴を言っている分には笑っていられるが、新聞に投書しちゃうって、おっさんまじかよ。とわたくしは思った。
わたし確か「だから学校ってとこはさあ」と感じたから、記憶が正しく学校側に従事する人が書いたとして、彼が真剣に天気予報ひとつにしろと思って書いたとして、
やっぱ学校って危険。
とわたしは思った。
まあ記憶が違っていたら申し訳ないが、いずれにせよ、
真実はどうであれ、ことを進めるために、そしてそれに関係する人々から苦情を言われないために、ひいては自分の行いを良く評価されるために、見失ってしまってはいけない大事な本質を無視したり台無しにしていく、
それが今学校で起こっている最も危惧すべき現状だとわたしは考えている。
9 お母さんたちのすごいうわさ
うちは小三の時に引っ越してきたこともあり、母子家庭ということもあり、わたしはよそのお子さんのお母さま方とそんなに交流がない。少ないほうなんじゃないかと思う。
でも気になるから、息子と同じ部活の子のお母さま方の話を少しずつ集めてみた。
顧問は厳しくて、時々手が出る。
それより言葉の暴力が酷い。試合中にひとりの子を大声で執拗に怒鳴り続けて帰らせようとした時には、見るに堪えなかった。
空のペットボトルで頭を叩くのを見た。
生活指導の先生なのに、ノーヘルで自転車に乗ってた。
何年か前には女子バスの顧問だったのに、保護者が集まって辞めさせた。で、男子バスケに来た。
そういえば、仮入部の時期だったか。人数多いしコートは狭い、試合は近い、ということで1年生は出なくていいんだと息子が言っていた数日後、わたしの携帯電話に先生から直に電話が入った。思いっきり不機嫌な様子で、練習に来ていませんが、とのたまう。1年は出ないと聞いていますが、と言うと思いっきり否定されたので大恐縮しちゃったんだが、あとで数人のお母さま方に聞いたら、全員同じ目にあってたんだよね。
そうだ、それから間もなく大会があって、自転車で行くことになってた。ある1年生の子の自転車が壊れてて(通学は徒歩)、そのお母さんは1年生だから行かなくてもいいでしょうと判断し顧問にその旨連絡した。それについて、顧問からは何も言われなかったのに、次の日その子が顧問にめちゃめちゃ怒られた。パンクして来れないってどういうことだ。これが大会前日。そのおうちでは、当日ご両親ともお仕事で送ることもできず、急きょ自転車を直すことも買うこともできず、彼は歩いて5kmほどの会場まで行った。しかもその日台風で土砂降り。風も吹くわさ。ずい分早く家を出てひとりとぼとぼと歩いたとのこと。
行かなくてもいいと判断して連絡した親には何も言わず、子どもを頭ごなしに叱る。
「怖いからもう絶対先生に何か言わないでね」
と彼はお母さんに言ったという。しかしその後何か月もしてまた別の試合のあった時、何かの理由で出られないためお母さんは恐る恐る先生に電話をしたそうです。そしたら、ごくあっさり「ああいいですよ。ユニホームも渡してませんしね(試合に出られないという意味でしょう)」と、すごく突き放された言い方だった。
とは、それらのことが起きたあとにそのお母さんから聞いた話だ。
「怖いから先生に何か言わないでね」
とは別の子もお母さんに言ったと聞いたが、実はうちの息子も入部早々に言っている。
即座に「そういう訳にはいかん。わたしは言いたいことは言う。悪いな」と答えたが。
息子の友人に頼もしく面白い子がいて、小学校の「情報」についての何かの授業で先生が、「情報たるもの何を媒体にしているか」という意味の質問をした時、みんなが「テレビ」「インターネット」など言っているなか堂々と、「お母さんたちのすごいうわさ」を挙げたという。聡明だな。
この言葉がわたしはすっかり好きになってしまって無断でよく使わせてもらうのだが、まさにこれだよ、と思った。この情報にはガセも混じるんだろうが、思いの外真実を炙り出していく場合もある。
そうだよ、この先生に関する噂、方向性があるよね。
ただし、お母さんたちのすごいうわさは、危険なので扱い注意だ。
それにしてもこの時点でわたしが最も気になっていたのは、2年生(3年はもう引退してたので最上級生)の1番か2番にうまい子が、部活に来なくなってる、って噂だった。
8 予報では明日も一日中雨
雨が降るという天気予報なのだが、降らない。
降らないどころか、さっきなんか日射しが暑かった。
それどころではない。天気予報では今日は朝から一日中雨なのだ。
洗濯物乾き指数なんてシャツ1枚の部屋干しねっマークだったのに
午前中のうちに分厚い風呂場の足拭きマットまでベランダで全部乾ききった。
昨日の予報もそんなだった。
昨日はまだちょっとは雨が降ったし、日射しはなかったし、予報通りにがんがん降らなかったけどまあこんなものね、と思ったものだったけれど今日はどうよ。
しかし問題なのは、今日の天気をインターネットで確認するたびに、過去の天気として示される本日の深夜0時からの3時間ごと細切れの天気の表示が全部雨じゃんね。
降ってないよ。
これがわたくしには不安。
頼りにしてる天下に公表中の天気予報が事実と違う。
降りそうにないのに降るって言いきってるのも困るねとは思うけど、降らなかったことを訂正するでもなく降りました、ってことになってて、何事もなかったように次の天気の予報は雨。
言いようのない不安な気分になるのですが、これがちょうど今わたくしが、息子の通う中学校と市の教育委員会に対する気分とそっくりなんですわ。
本当は天気予報の件は、かなり精度が上がったとはいえ外れることもあるだろうしピンスポットで天気が違えば表示にも苦労するだろうし、何せ台風も遠くにいるから難しいんだろうね。しょうがないね。くらいの見識は持ち合わせております。
でもわたしの今いる世界のこととして、わたしが体験している事実と違うことが公表されていてそのまま世界は存続していくという事態に対する、奇妙な感じの不安には襲われる。
あ、これ拡大するとそっくり。
と気づいたので思わず書きました。早々にブログの時系列を乱しましたが、現在のわたくしの学校に対する奇妙な気分は、全くこの不安の拡大版です。
ということで、天気予報は明日も一日中雨。
あなた、信じる?
7 目的は何だ
ここでちょっと話を戻しますが、
わたしだっていきなり教育委員会に物申した訳ではなかった。
一応迷った。
それだけじゃなく、他のお母さん方にもそれとなく聞いてみた。何人かには、物申した後に聞いたけど。
「あのランニング、どう思う?」
部活だもん、そんなもんじゃないの。
知らない、うちの子何にも話さないのよ。(そんな年頃です)
何とかついていってるから何より。
ランニングより、宿題が多過ぎてできてないことのほうが心配。
などの声を聞くことができました。
あの。お宅のお子さん吐いてますけど。お宅のお子さんはあまりに辛そうでうちの息子が「見てられない」と言ってますけど。など思いつつ、かなりもどかしい心持ちになりました。
実は、顧問の対応よりお母さま方のこの反応のほうが、わたしをめげさせた。
人命の危機感を持っているのはわたしだけなのか?
わたしのほうがおかしいのか?
いや待て。ひとりだけしか危機感を感じていなくても、冷静に、客観的に、
この暑さで
そのランニングは
いかん
だろう。そうそう簡単に人は死なないのかもしれないが、もしこの練習で人が死んでも驚くには値しないよ。驚く人がいたら、莫迦にしちゃっていいですか。
それにどう考えても、走ってばかりじゃバスケットうまくならないよ、こういう走り方が体にしみついたら試合でバテること請け合い、というわたくしの持論も少しはありました。でもまあこれはわたくしの見解で、そんなに主張してもしょうがないとは思う。
でもしかしだね、一体顧問は何が目的。
6 予期せぬリアクション
驚いたことに教育委員会に熱中症対策を頼んだその日の午後に、息子が1枚のプリントを持って帰ってきた。
熱中症はご心配でしょうが、ちゃんと対策をとっています。
水は飲ませています。遠くまでランニングで出る時は、教員ひとりが水持ってポイントポイントに先回りして、もうひとりが生徒たちについて回るから大丈夫。塩もなめさせています。教員は温度計を持ち歩いています。
みたいな内容だった。驚いた。そういうの、入部の説明会みたいなとこで聞いてるよ。そんな対策じゃ間に合わなわないWBGT値でしょ。吐いても水飲みゃいいのか。複数の生徒倒れたらどう対処するの。家族が出払ってる家に帰ってから倒れたらどうするの。連日37℃とか38℃だったよ。きっと実際の温度は40℃を超えてるだろうに、温度計を見て走るのに良い温度だと、どの数値で判断してるの。
息子は言った。
「誰かのお母さんが学校に言ってったらしいよ。先生は
『勘違いしてんだよなあ。困るなあ』
って言ってたよ」。
驚いた。勘違いだって。しかも、ひとりの生徒を名指して、お前の母さんじゃないか、と言ったという。
「お母さん、学校に何か言ったんじゃない?」
と息子は心配そうにわたくしに問うた。言わないよ、と嘘八百を口にしつつ、胸中は何というかものすごく黒い暗雲がみるみる立ち込めていく感じだった。