6 予期せぬリアクション

驚いたことに教育委員会熱中症対策を頼んだその日の午後に、息子が1枚のプリントを持って帰ってきた。

 

熱中症はご心配でしょうが、ちゃんと対策をとっています。

水は飲ませています。遠くまでランニングで出る時は、教員ひとりが水持ってポイントポイントに先回りして、もうひとりが生徒たちについて回るから大丈夫。塩もなめさせています。教員は温度計を持ち歩いています。

みたいな内容だった。驚いた。そういうの、入部の説明会みたいなとこで聞いてるよ。そんな対策じゃ間に合わなわないWBGT値でしょ。吐いても水飲みゃいいのか。複数の生徒倒れたらどう対処するの。家族が出払ってる家に帰ってから倒れたらどうするの。連日37℃とか38℃だったよ。きっと実際の温度は40℃を超えてるだろうに、温度計を見て走るのに良い温度だと、どの数値で判断してるの。

 

息子は言った。

「誰かのお母さんが学校に言ってったらしいよ。先生は

『勘違いしてんだよなあ。困るなあ』

って言ってたよ」。

驚いた。勘違いだって。しかも、ひとりの生徒を名指して、お前の母さんじゃないか、と言ったという。

「お母さん、学校に何か言ったんじゃない?」

と息子は心配そうにわたくしに問うた。言わないよ、と嘘八百を口にしつつ、胸中は何というかものすごく黒い暗雲がみるみる立ち込めていく感じだった。